サハラの旅から戻り、改めて砂漠の友人たちを写真に収めたいと始めた写真ブログ

旧友の手術

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写真は、1998年、マリ北部にて旧友を写す

昨晩、マリのサハラ砂漠に住む旧友の娘からの伝言を受け取った。
「牛を譲ります」

夏のサハラ砂漠の旅で、妻のおじにあたる古い友人を見舞った。
見舞った時は、思ったより元気そうに見えた。

しかし日本に帰り、彼の調子がまた悪くなったと聞いた。
人づてに、首都のバマコに出て検査するように勧めた。

11月末、首都の我が家に彼が着いた。
ビデオチャットで彼と話した。
話している途中、急に彼の口から言葉が出なくなった。
意識ははっきりしている。
こちらの話はわかる。
しかし、口が動かせず、もどかしいようだ。
脳の障害を心配し、すぐに脳の検査を受けるよう勧めた。

脳に腫瘍が見つかった。
脳浮腫があり、すぐに手術が必要との診断。
しかしマリには脳の外科手術の出来る医師がおらず、手術不可能とのこと。
診断した医師に、セネガルの病院を紹介してもらった。

砂漠の彼の家族と、首都の私の家族が中心になり、一族から寄付を募った。
セネガルへの彼と付添いの渡航費、手術と術後の入院費・・・
手術は一日でも早い方がいいが、必要な額はなかなか集まらない。
しかし待っているだけでは、事態は良くならない。
とりあえず、彼と弟のセネガルへの渡航と、当座の滞在と診察費用を送金した。
セネガルの首都ダカールで診察を受け、手術にかかる費用の概算が知らされた。

腫瘍が良性か悪性かわからない。
医師の「金のため」の手術でないか。
そんな不安も頭をかすめる。

一族の、病気や経済的な問題に関わっても、限りはない。
私たちがすべてをどうにかできるわけではない。
正直、そんなことも考えた。

しかし、何もせず手をこまねいているのは嫌だった。
気休めかもしれない。
自己満足に過ぎないかも知れない。
それでも、サハラ砂漠に見舞った旧友のために、できるだけのことをしたいと思った。

年末年始の家族旅行を1日短くした。
その1日の楽しみと費用を彼のために。
それから高いレンズを一本買うのを延期しよう。

息子が書斎に来て私に言った。
「クリスマスのプレゼントやお年玉はいらない。
その分、手術のために送りたい」
夕食の席で妻が言った。
「生活費をしばらく節約するから、その分も足してあげて」
それを聞いて娘が言った。
「良くなるといいね。お祈りするわ」

手術・入院費を送金した。

また、彼のクルアーンの詠唱が聞けるように。
砂漠のテントで、彼と話をしながら、お茶が飲めるように。
そう祈っている。

昨晩、砂漠に住む彼の娘からの伝言を受け取った。
「現金がないので、牛たちを譲ります」

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コメント(10)

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記事を拝読していて。。
胸がつまり、涙がこぼれました。
上手く自分の気持ちを言葉にすることができないのですが、
ご友人のお嬢さんからの伝言、たまらなく、胸に迫ってきます。
jujubierさんと奥さまやお子さんたちの親身なお気持ちと願いがきっときっとかないますように、私も祈らせていただきます。

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なんと書いたらいいのやら・・・・
元気な時はいいですが、
病気になると砂漠の生活は辛いですね。
病院も現金もないでしょうから・・・

jujubierさんのご家族の思いが伝わって
手術が成功したらいいですね。
お兄ちゃんの優しい言葉に感激しました。
冬休み、春休みに時間があったら電車で遊びに来て・・・と伝えてください。

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 砂漠の生活、日本と違い医療機関にかかるのは大変なんですね。
 手術ができる病院が無い。他国まで行かなければならない。そんな中でjujubierさん一家のご友人を思う気持ちに心が打たれます。

 私も病気を背負っているけど、今の日本で標準の治療を受けることができる。保険もあるので、費用面でもなんとかなる。これはとてもありがたいことだとつくづく思います。

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こんばんわ。
日本の中で、日本の人々とだけ付き合っている者には、手触りとしてわかる事のない事に直面されているのだと思います。
何もお手伝いできませんが、手術が無事に済んで、回復されることをお祈りしております。

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切ないです。
砂漠での生活、未知のその生活の厳しい一面を知りました。
でも彼を支えたいと願うjujubierさんご家族の気持ちの
なんて温かいことか。
皆さんの祈りが届くようにと心から思います。

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*rosyさん、お言葉ありがとう。
それから、祈って下さっていること、彼とその家族に必ず伝えます。

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*かよさん、ありがとう。
お兄ちゃんにちゃんと伝言伝えましたよ。

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*マサエさん、
砂漠に暮らしていると、「運命」というか、自分の力でどうにもならないことを、たくさん感じます。
不条理も感じます。
でも、だから不幸だとは思わないんですよね。
なぜでしょう・・・

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*j_capacityさん、ありがとう。
あなたの祈りも、彼とマリに残っている彼の家族に必ず伝えます。

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*ナギヲさん、ありがとう。
また、連絡があったら彼のこと、お知らせします。
まずは、手術の何時になるのかという連絡を待っているところです。

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このブログ記事について

このページは、Yoshinori FUKUIが2006年12月27日 05:09に書いたブログ記事です。

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