サハラの旅から戻り、改めて砂漠の友人たちを写真に収めたいと始めた写真ブログ

人を撮る 【閑話休題】

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撮った相手に喜んでもらえる
そんな写真が撮りたい
そう思いながらシャッターを切る

イスラム教の方たちは写真を嫌うのでは?
そう質問を受けた。

人物写真は偶像崇拝につながる危険がある。
だからイスラム圏では、確かに、人にカメラを向ける行為は良いものとは思われていない。

とは言え、イスラム圏でも、大統領や国王や宗教的指導者の写真がホテルやレストランや事務所や自宅に飾られていたりする。
原理原則と世俗の慣行は違うということだろう。
私自身にもジレンマがある。

イスラム圏(そうでない地域はわからない)北・西アフリカでも、人の写真は良くない、という意識がある。
だから、見ず知らずの人にカメラを向けたら、怒られたり、嫌がられたり、トラブルの原因になる可能性は高い。
また、宗教的な理由ではまったくないが
「写真を撮ったのなら金くれ!」
と写真を撮られることを金もうけの口実にする輩もいる。

しかし、家族や友人など良く知っている人々の場合、写真が嫌がられることはほとんどない。
むしろ、デジタル写真を撮ってその場で本人や周りの人たちに見せると、とても喜ばれる。
それが自分が思っているより格好良く撮れていたら、なおさら。
だから彼らの写真を撮るという行為に、ムスリムとして悩みながらも、写真を撮ることが好きだし、彼らの喜ぶ顔が嬉しく、私は彼らの写真を撮り続けている。

写真のうまい人に撮った写真を見ていただくと、
「風景に比べれば、人物の方はまあまあだね」
と言われるのが私のお決まり(号泣)
風景写真は見られたもんじゃない、とストレートに言えず、なんとか良い所を探すと、そういう画一的な言い方になるのだろう。

それでも人物写真が、ほかの対象物より少しはましに撮れているとすれば、それは
「撮った相手が喜んでくれるような写真を撮りたい」
と強く思っているからだろう。

イスラム圏の砂漠で人を撮っているが、私なりのルールもある。
排泄行為、性行為やそれを想起させるシーン、大人が口を開けて食べているシーン(あちらではとてもはしたない)、肌の露出度の高い成人女性、ステレオタイプのアフリカの野蛮さや未開のイメージ、同情をそそるようなシーン、etc.
こういうシーンは「原則」撮らない。

それは、
・そこに住む人たちの価値観、文化を尊重した上で彼らの姿を伝えたい、
・いたずらに人目を引くためでなく、良くも悪くも、等身大のサハラ砂漠やマリの姿を伝えたい
という思いからだ。

バマコの投稿で書いたが、今回、生前の義母の写真をまとめ、家族や弔問客にスライドショーにして見せたところ、とても大きな反響があった。
その時、家族の写真を撮り続けていて良かった、としみじみ思った。

今回写真を撮った人たちの中には、生きているうちにはもう会えない人たちが何人もいるだろう。
義母の死に接し、とりわけそう思うようになった。
事実、日本に帰ってから、既に2人の訃報に接している。
だから、数年は再訪できないだろうという思いの中、その人自身、そして家族や部族の記録としても1枚でも多く撮りたいとシャッターを切っていた。

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コメント(8)

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質問に対して丁寧なコメントを書いてくださり、
コメント欄ではもったいないと思っていたので、
別スレッドにされてよかったです。
皆さんに読んでいただけるから・・・。

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写真を載せることについては、いろいろな意見があり、どこまでで線を引くかはとても難しい問題だと思います。
いろいろな意見がありますが、人のためを思うアドバイスは、謙虚に耳を傾けたいと思っています。
それから、気をつけるのであれば、写真だけでなく、(写真がなくても)文章もしっかりと配慮する必要あるのでしょうね。

娘さんが、生きがいを感じる人生を歩まれますように!

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またまた久しぶりのコメントに成ってしまいました。
全てにコメントを付けたいのですが、また機会を見て。

で、素晴らしいです。写真も文章も生き様も。
私にはもう背負う物が多すぎて好きなことは出来ませんが、憧れます。
宝くじでも当たったら背中の荷物が軽くなるので、ぜひ連れて行って下さい。(^_^;)

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いなやん、お返事が遅くなりました。
お誉めいただきとても嬉しいです。

宝くじ、当たるといいですね(笑)
当たらなくても、せめて途中のカタールまで一緒に行きましょう!
カタールでレンズやカメラを売れば、きっと元取れますよ。

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ああ、ご無事でしたか。
音沙汰がないので心配しておりました。
いや、また砂漠へ行ってしまったのかと。(笑)

カタールへ行けば誰かがレンズを沢山買ってくれそうですね。(^_^;)

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やはり人と人との繋がりをきちんと作っているから、
ここにある写真に写っている人たちはこんなにも自然で魅力的なんですね。
場所に限らず、どんな人でも見知らぬ人からいきなりカメラを
向けられたら、戸惑ったり不審に思ったりして当然ですものね。
人を撮ることについて、きちんと自分のルールを設け、
友人や家族に対するような気持ちで接しているのが素晴らしいです。
私はなかなか人に話しかけられなくて、それゆえに人の写真を
撮る機会も少ないので尊敬してしまいます!

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いなやん、ご心配いただきどうも
残念ながら、砂漠には行ってません。
次の砂漠は絶対カタールです!

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ナギヲさん、知らない人を撮るのは難しいですよね。
でも私の場合、図々しいので人に話しかけるのは苦手じゃないかも(笑)

マリの親類や知人でも、きっちり挨拶(仁義を切るようなものかな)した後でないと、カメラを向けるのはひんしゅくを買いますね。
挨拶した後でも、ファインダーばっかり覗いていると、やっぱり変なやつだと思われちゃうでしょう。
写真も撮りたい、彼らとの絆ももっと深めたいと思うと、短い滞在は無理があります。
次はじっくり滞在したいです。

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このブログ記事について

このページは、Yoshinori FUKUIが2006年10月 4日 06:30に書いたブログ記事です。

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