サハラの旅から戻り、改めて砂漠の友人たちを写真に収めたいと始めた写真ブログ

L'écriture(書くこと)

| コメント(9) | トラックバック(0)
d0087256_2147271.jpg

このヒツジははじめから病気みたいだ。

妻の母語タマシェク語の文字ティフィナグで書かれたある物語

さて、この物語は?
 謎なぞ写真、ついにシリーズ化(カテゴリー化)!(笑)

a href="http://204.202.18.223/mt/2006/2007/10/la-communication-numerique.html" title="La communication numerique(デジタル・コミュニケーション)" target="_blank">前回の投稿で、「アルビレオ の雑記帳」のthejetmoleさんからこんなコメントを戴いた。

手紙のやり取りが面倒でも、一番心に残ります
プリントアウトした物ではなく、鉛筆でもいいですから、肉筆で書かれた物は とても大切になります

書くこと、読むことに慣れた日本人には至極もっともな説得力のある意見だ。
私自身も確かにそうだと思う。
しかしサハラ砂漠以南のアフリカでは、話が変ってくる。
妻やその家族にとっては、そうではないだろう。

アフリカの多くの地域では、自分たちの話す言葉を書かない。
つまり文字がない。
現在、アフリカの多くの国で、文字を持たない多くの言葉のために、教育の普及の一環として、また固有文化の継承のために、主にラテン系のアルファベットを基礎とした表音文字による識字教育が行われている。
しかしそれはまだまだ浸透していない。
文字のない社会では、遠く離れた相手に、どうやって心のこもったメッセージを伝えるのか。

妻の民族、トゥアレグ(自称はケル・タマシェック)の場合、その言語タマシェク語はアフリカでは例外的に、古代リビア文字に近いティフィナグという文字を持っている。

d0087256_22405949.jpg 100年近く前に書かれたタマシェク語−フランス語の辞書

文字を持たない彼らが、お互いの消息を尋ねるのに使ってきた方法は、言伝(ことづて)(笑)
誰かが旅する時、行く先の家族や親類にたくさんの言伝をした。
また80年代頃からは、ラジカセを使った「声の手紙」が使われてきた。
我が家にも、そんな親類からの「声の手紙」が何本もある。

妻は、亡くなった父が生前に吹き込んだクルアーン(コーラン)のカセットを毎日聞いている。
彼女にとっては、これが一番大切な「声の手紙」だろう。

だから文字をもたない彼らにとっては、手紙から、電子メールへ、そして文字チャットからボイスチャット、ビデオチャットという我々の知るインターネット上のコミュニケーションの進化は馴染みのないものだった。
それよりも、カセットテープの「声の手紙」から、一気に音声チャットやビデオチャットに辿り着くほうがごく当たり前のことだった。
携帯電話の普及も、大規模なインフラの整備が必要ないからこの地域で爆発的に普及したのではない。
話す言葉によるコミュニケーションをより簡便にするものだからこそこれほどまでに普及したのだろう。
(つづく)

追記 (2007.10.4)
「音の手紙」を「声の手紙」に変更した。
一部書き足した。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://sahelnet.org/mt/mt-tb.cgi/2539

コメント(9)

SECRET: 0
こんばんは。そうですねぇ最近はメールですますことが多く、手紙をしたためることが激減してしまいました。
でもお便りをもらったら嬉しいですよね。自分は書かないくせに、矛盾してますけどね^^;
↑音による便り、暖かいですね。
今はすっかりデジタル化、インターネットが普及してしまいましたし。。。
私の幼少時の記録は、写真と、父が8ミリカメラで撮ってくれたものと、あとカセットテープに記録されたお話してる声など。
時代を感じますね^^;
文字よりも声、姿をじかに見ることで安心したり、こういうほうがあったかくていいですね。
Amary

SECRET: 0
飛行機に乗って消息を絶った、あの方のでしょうか。
それはともかく、すてきな文字ですね。美しい。

SECRET: 0
今もお父さまのクルアーンでお祈りをしているというのは感動的ですね。この上ない平安が得られそう...

SECRET: 0
う〜ん...星の王子様でありますか...

この國も万葉期以前は文字がなかったのであります。
たぶん、記憶力はスゴイものがあると思われるのであります。

SECRET: 0
*Mlle_Amaryさん、
本当は直接あって、膝を突き合わせて話ができるのが最高ですよね。
でもモニター越しでも、遠く離れた家族や友人と、顔を見ながら声をかわせるのは、とてもありがたいことだと思います。

SECRET: 0
*msmt142さん、
税金がどんなレンズに化けたのか、とても気になります(笑)

はい、正解です!

ティフィナグ文字は、筆記体のラテン系の文字やアラビア語と違い、一文字一文字分けて書きます。
ちょっとカタカナに似ています。
アラビア語のように、基本的には子音しか書かないので、母音は自分で補います(爆)
その上古い碑文など右から左へだけでなく、下から上へ書かれていたり(笑)
ですから文法と単語を知っていないと読めません。

SECRET: 0
*thejetmoleさん、
妻の妹は、ずっと私が撮った義父(彼女の父)の写真が辛くて見られないと言っていました。
義父が亡くなり7年経った昨年、義母(彼女の母)が亡くなりました。
その時初めて、彼女は義父、そして亡くなったばかりの母の写真を、私のパソコンのモニターで見てくれました。
泣きながら。

SECRET: 0
*abusanaさん、
ご無沙汰しております!
妻にとって、義父は理想の男性像のようです。
それはなかなか越えられない・・・(汗)

SECRET: 0
*ひらりんさん、
はい、正解!

妻は数年前に聞いた電話番号でも記憶しています。
「何年前のあの時、こういう状況であなたはこう言ったでしょ?」
と問い詰められることがしばしばありますが、私はさっぱり記憶がない。
否定できなくて負けてしまいます(謎)

コメントする

このブログ記事について

このページは、Yoshinori FUKUIが2007年10月 3日 22:56に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「La communication numérique(デジタル・コミュニケーション)」です。

次のブログ記事は「Très cordial...(心からの)」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。