サハラの旅から戻り、改めて砂漠の友人たちを写真に収めたいと始めた写真ブログ

Une nuit dans une tente(ある夜、テントで) 14

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アラビアコーヒー、紅茶、そしてなみなみと注がれたラクダのミルク
昼間の陽射しと渇きをやり過ごし、たっぷりと咽喉を潤す

テントの外は夜のしじま
しかし中には暖かい光
横になり、肩ひじをつき、言葉を交わす
いつまでも、こんな時間と空気の中に身を委ねていたかった

初めての国に入る時は、期待が半分、不安が半分。
ヨルダンに着くまで、あれもしたい、こんなこともできるかと期待も大きかったが、期待と同じくらい不安もあった。
言葉が通じるだろうか、失礼な失敗をしないか、写真は撮らせてもらえるだろうか・・・ 
しかしいざ入国した後は、何が不安だったのか思い出している暇もないくらい、いろいろな出来事がつぎつぎとあり、それに一生懸命対応しているうちに時間が過ぎていった。
ドキドキは完全にワクワクに変わってしまった。

ワディ・ラムに着くまでも、
・アリさんにはどれくらい英語が通じるのか、通じなかったら片言のアラビア語でどこまで乗り切れるか
・ヨルダンのラクダにはうまく乗れるだろうか、久しぶりに乗ってすぐにへばってしまわないか
心配事はたくさんあった。
しかしワディ・ラムに着くと、すぐにアリさんに出会え、アフマドさんを紹介され、ラクダに乗って・・・ととんとん拍子で事態が進み、ここまできた。

しかし、アフマドさんのアドバイスでカメラをしまい、テントに歩いていく時、また心配の虫が頭をもたげてきた。
アリさんの父親は私を受け入れてくれるだろうか。
ベドウィンの暮らしを垣間見ることができるだろうか。
それを少しは写真に撮ることができるだろうか。
失礼な行為をせず過ごせるだろうか。

そんな不安を抱きながら、テントの縁まで辿り着いた。
テントの入り口には、囲炉裏のようなものがあった。
「アッサラーム、アライクム(こんにちは)」
そう声をかけながらテントの中を覗くと、テントの中には誰もいなった(あれ?)
返事は、隣のテントからあった。
隣のテントから出てきたのは、朝別れたアリさんだった。
アリさんは、一足先に車で父親のテントに着いていたそうだ。
アリさんの父親はまだテントに戻ってきていなかった。

アリさんは、テントの奥に積まれたマットレスを引っ張り出し、テントの入り口近く、その縁に沿ってL字型に3枚敷いてくれた。
そこにクッションが置かれた。
私はサンダルを脱いでテントに入り、入り口に一番近いマットレスに胡座をかいて荷物を置いた。
アフマドさんは、奥のマットレスにゴロンと横になった。

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しばらくすると、彼らは私の存在を忘れたように、何やら真剣に相談を始めた。
話はほとんど分からなかったが、明日何かすること、それがラクダに関すること、それだけ分かった。
だが、何の話か訊ねなかった。
明日になり、帰るまでに間に合えば、それが何の話だったか分かるだろう。
帰った後のことなら、それは縁がなかった出来事なのだ。

何時間も話をしていた気がした。
眠くなり時計を見ると、しかしまだ9時過ぎだった。
10数時間の夜行フライトと早朝のトランジット、その後すぐに車で移動。
車中では、初めての国の風景に釘付けになった。
車を降りると、岩地を半日歩き回った。
その夜しっかり寝たとは言え、今日はまだその翌日。
朝4時に起き、車で移動し、それからラクダで数時間旅してきたところだ。
興奮しているが、体も心も少し疲れているようだった。
「眠くなったか?」
と聞かれ、素直に頷いた。
すると、すぐにテントの奥にマットレスを敷いてくれた。
そして別のテントから、大きな布団を持ってきてくれた。
アリさんの母親が作ったウールがたくさん入った毛布だという。
ありがたくそれを使わせてもらった。
カメラバッグを枕元に置き、防寒用の衣類の入ったズタ袋(仮名)をマットレスの横においた。
横になるとすぐに寝てしまったように思う。
とても幸せな気持ちで。

追記

朝起きて、旅のメモを読み返して見ると、間違っている内容があった(父親の座っていた場所や、後で席を立ったことなど)ので訂正。

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コメント(18)

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アラビックコーヒーの煎れ方、飲み方、湾岸でも同じです。
らくだのミルクも、一人一人コップなどに入れて飲みますね。

私も親父連中の前ではカメラは持ち出しません(笑

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*たけやん、
あ、やっぱりコップで飲むものなんですね。
へ〜!
情報、ありがとうございました。

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 アリさんがコーヒーを淹れる時の写真が、とっても良いです。
 いかにも自然で、いつもやっていることをそのまま客にしている感じ。
 こんな時間が持てるのは、やはり普通の観光旅行ではなく、jujubierさんもイスラム教徒でアラビア語ができるということが大きいでしょうね。

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この写真も好きだな〜
NOCTILUXの、いい感じが出てますね〜

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写真も話しもステキですねぇ~。
すごくゆっくりとした時間が流れている感じがしました。
読みながら、まったりしてしまいました。(会社にいるんですけど・・・)
はぁ。。。
いつか必ずらくだで砂漠を旅したいです。

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アリさん、かっこいいですね。
コーヒーを注ぐ写真は特に背筋が伸びて茶道をしているみたい。
マットレスに横たわっている姿も素敵。

こういう生活ならゴミもほとんど出ないでしょうね。
私たちの生活はゴミの出しすぎですね。

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フランス語、英語、アラビア語・・・。
語学が堪能だと何処へでも行けますね。
裏山C
私も大阪弁、京都弁、神戸弁くらいは話せますが、
広島弁、名古屋弁あたりになると聞き取りは出来ますが話せなくなります。

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連日、未体験の世界を体感させて頂いております。
今日はアリさんの父親が登場すると、
私まで緊張してしまいました(笑)
いつもの美しい光をたたえた写真と共に、
本当に臨場感のある文章に、
引きこれてしまいます。
本当に体感に近い貴重な体験です。

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*マサエ。さん、
写真気に入っていただけて嬉しいです。
でも、アラビア語は・・・かなり苦労しました。
特に親父さんとの会話では(大汗)

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*himalayaさん、
ありがとうございます。
Noctiluxはこういうシチュエーションでは一番に手が伸びるレンズです。
もう一回り小さくて軽ければ、いつでも使うんですが・・・

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*gangnekoさん、
ワディ・ラムでは、本当に素晴らしい自家の過ごすことができました。

2011年の夏、サハラ砂漠に行く予定です。
一緒にいかがですか?

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*かよさん、
アリさん、カッコいいでしょ?
でも翌日の親父さんに比べると・・・(笑)

こういうマットレスの上に座ったり、ゴロゴロしている生活好きです。
あ、我が家の居間もあまり変わらないか(笑)

ゴミは少ないでしょうね。
でもワディ・ラムの暮らしは、サハラ砂漠に比べるとかなり町との繋がりが強く、ものが入っていると思いました。
その話はまた。

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*いなやん、
アラビア語は本当に片言です。
でもそれでも話せると、あるいは聞き取れると、楽しいものです。

名古屋弁は私も喋れませんよ。
私が住んでいるところは関西文化圏で、関西弁に近いですね。
高校の時、名古屋の高校に通い、自分のアクセントを笑われ、ショックでした。
あれで、言葉へ敏感になったのかな。
今では標準語を喋っていると、出身はバレません(笑)
・・・って「日本語上手ですね」と言われていたらダメか(爆)

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*ave999さん、
写真と文章、楽しんでいただけているのなら、これほど嬉しいことはありません。
自分も本当に楽しんだことだから、少しはそれが伝えられているのかな。

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なぬなぬなぬ!!!
2011年でっか!
それは今から数えると3、4年後ということですな!
すると、少しは私のアラビア語も上達してる?!
でもって、私の子猫ちゃんも大きくなって少しくらいの
留守なら大丈夫?
うわぁ〜、行きたいです〜!
それに、今からなら、旅費も貯めれる!
まってて〜サハラ砂漠〜!!!

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*gangnekoさん、
行きましょう!
ただ、トゥアレグにはアラビア語はあまり通じないかも知れません・・・

SECRET: 0
あり。。。
アラビア語は通じないとな・・・。
では、何語でしょうか???

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*gangnekoさん、
タマシェク語というベルベル(アマズィグ)系の言葉です。
(チャットみたいになってる、笑)

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このブログ記事について

このページは、Yoshinori FUKUIが2007年11月29日 23:41に書いたブログ記事です。

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