サハラの旅から戻り、改めて砂漠の友人たちを写真に収めたいと始めた写真ブログ

Les flots de la lumèire(アンマンの壁) 20

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アンマンのダウンタウンは
光と人で溢れていた

しかしその明るい光は
いくら歩いても私には降り注がなかった
人ごみの中にいても
人々はとても遠かった

1.ワディ・ラムからアンマンへ

日本を出たのは金曜日の深夜。
ヨルダンに着いたのが土曜日の朝だった。
ワディラムを出たのは月曜日の昼。
ここまで、ヨルダンに着いてたった二日のできごとだった。
しかし日本を出たのがもう何日も前のような気がした。
それほど、ヨルダンでのこの2日間の時間の流れは濃密だった。
ペトラとワディ・ラムのとても大きな余韻に浸りながら、アンマンに向かった。

2.アンマンで

しかしアンマンのホテルに着き、夕方5時過ぎにカメラを持って街に出たが、途方に暮れてしまった。
長年夢にまで見て遂に訪れたペトラとワディ・ラムの印象があまりに強烈だった。
自然と都会という180度違う世界に戸惑ってしまった。
しかし、もうひとつ、実はヨルダンに来てから解決していない内面的な問題があった。
イスラム圏で写真を撮ること、特に人をスナップの中に写すことについて気持ちの整理がついていなかった。
だから、見知らぬ人に溢れたこの町をどんな風に切り取ればいいのかさっぱり分からなかった。
写真を撮ることが怖かった。

こんな風に壁にぶち当たった時にどうすべきか、写真については知らないが、仕事や人生については分かっている。
悩みは置いておき、とにかく前に進む(笑)
ホテルの前の道を東に向かった。
しばらく歩いていくと (町の中心)と書かれた標識を見つけた。
そこで左に折れ、細い道を北に下っていった。
同じ標識を見かける度に、その方向を目指し、どんどん下っていくと、賑やかな通りに出た。

マナー違反にならないように気をつけながら、目に付いたものを片っ端から撮っていった。
挨拶し、了解を得てから撮る。
あるいは撮った後で了解を兼ねてお礼を言う。
顔をはっきり写している場合はそう心がけた
そしてどんな場合もこそこそと撮らない。
ビビりながらも、そうやって写真を撮り続けた。

大きなモスクの前に出た。
ちょうど礼拝が終わったところのようだった。
モスクの前を左(たぶん南)に進んだ。
スパイス、果物、肉、野菜などの店が続く道を写真を撮りながらしばらく歩いた後、左(東か)に折れ、それからもう一度左に折れた。
これでモスクの方角に進んでいるはずだ。
このあたりは先程の道とは違って、雑貨、衣料、金物屋などが多かった。
右手(東だろう)には山があり、その斜面も家々で埋め尽くされていた。
モスクの近くに出るかと思ったが、左手にモスクは見えなかった。
どうやらふたつの道は平行に走っていなかったようだ。
もう一度左折してしばらく歩き続け、少し引き返してモスクの近くに戻ることができた。

持ってきたSDカードが一杯になった。
時計を見ると7時半だった。
わずか2時間しか経っていなかった。

撮るのが楽しい時はあっという間に時間が過ぎ去る。
しかし今日は、2時間が数時間にも感じられた。
良い写真が撮れた、という感触がなかった。
体の芯から疲れてしまった。
今日はこれ以上は撮れないとホテルに帰った。

あの日の苦しみがこの写真たちのなかにある。

d0087256_20224477.jpg これがインドナツメの実、jujubeだ。

人があまり撮れず、店先のものの写真ばかり撮っていた・・・

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コメント(10)

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う〜ん、苦悩でありますな...
最近、プロのスナッパーどもは東南アジア、インド、チベットを主なフィールドにしているのはあながちウソではないと思うのであります。

ということで、振り向くヲッサン(若者?)に一票であります。

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ノクチの甘いトロ味がいい雰囲気を出していますね。
私ははなっからスナップはあまりやらないのです。
なぜって小心者ですから。(^_^;)

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 私は、他人の写真はあまり撮らないからなー。
 風景に入ってくる場合だけで、はっきりその人を撮るということはほとんど無い。
 写真を撮ってお金を得ている人・芸人などは、対価を払って撮るようにしてるけど。
 イスラム教の場合、写真を嫌がる人もいる、という話を聞きました。jujubierさんの葛藤もその辺りが大きいでしょうね。

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おお、ずしっとくる本文でございました。
そして、ぐっとくる写真でございました。
何も考えず、適当にパチパチ撮った写真ではない
独特?の深みを感じた気がします。
香水好きです。瓶が宝石みたい。。。
珍しい見たことのないものがたくさんです。
今日も良い写真をありがとうございます。

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*ひらりんさん、
日本もイスラム圏に負けず劣らず、スナップが撮りにくい国だと感じますね。
特に男は、子どもの写真が撮れないですね。
「変な人」に間違えられそうで。

振り向く若者、私も魅かれました(笑)

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*いなやん、
ノクチは夜使うには最高のレンズですよね。
でも今回IRカットフィルターを付けていたら、アンマンの夜の明かり(点光源が多い!)でゴーストが出まくってました(涙)

ところでD3の写真はまだですか?

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*マサエ。さん、
私は、
「旅の楽しみは何?」
と聞かれれば「出会い」
「何が撮りたい?」
と聞かれれば「人」
です。
だから人が撮れない状況は、苦しいです。

ところで、マサエ。さんのカメラもモロッコの砂漠で調子が悪くなり、その後壊れたんですよね。
直りましたか?

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*gangnekoさん、
いつもコメントありがとうございます。
カイロの写真もお楽しみに!

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イスラム圏で人を取ることの難しさは、まがりなりにも理解しているつもりです。
今回の市場でのスナップ、やはり葛藤が現れているように感じます。

普段はめったに人の写真は撮らない私。
でも仕事ではそんなことは言っていられないので、被写体にできるだけ寄って撮ります。
でも実は、レンズを通して対峙したときのあの緊張感が少し好きなのかもしれません(笑

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*たけやん、
アンマンは辛かった(涙)
人でなく店先の果物を撮っていたのに、通りすがりの人にボソッと (禁止)って言われて・・・挫けそうでした。
たけやんと違って仕事で撮っているわけではないですから・・・
それでも人の営みを撮り貯めずにはいられません。

でもマリでは、西部地域トゥアレグ公認フォトグラファーです(嘘)

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このブログ記事について

このページは、Yoshinori FUKUIが2007年12月 5日 20:50に書いたブログ記事です。

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