日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

冬の風

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日中も暑さがずいぶん和らいできましたね。
夜風はずいぶん涼しくなってきました。
意外かも知れませんが、秋から冬にかけての冷たい風は、夏の日差し以上にサヘルを思い出させてくれます。
10年以上前、日本から遠くマリのフィアンセ(今の妻です)の事を考える時は、よく車の窓を開けて耳を切り頬を叩く風を受けて、サヘルの日々を思い出していました。

12月から1月にかけて、サヘルの北部では明け方の温度は摂氏10度以下になります。それに比べて日中は30度くらいあるため、日格差から夜の寒さはいっそう強く感じられました。
アルジェリアのアハガル山地(一番高いタハト山は標高3千3メートル)や先史時台の岩壁画で有名なタッシリナジェールは平均標高が千数百メートルありますので、冬には革袋の中の水が凍ることもあります。
マリでも冬場、太陽がどこにあるかわからないくらい砂が舞っている日は、昼間も気温が上がらず寒さが身に染みました。
ラクダに乗っていると、障害物がないぶん地面近くより風が強く寒さも堪えました。
冷たい風にタギルムース(トゥアレグの言葉でターバンのこと)やアナカッバ(ブーブー:貫頭衣)がはためくの音とそのはためきを受ける皮膚の感触は、今でも体の芯に残っています。
寒さで夜明け前に目が覚めて、タギルムースを巻く時の手のかじかみ、足の裏から伝わる砂の冷たさ、そして火を焚いてかざした手のひらや足の裏にあたる炎の暖かさも忘れられません。
手足を温めながらいれたお茶の喉から染みる暖かさは、値段が付けられないほどありがたいものでした。

今、サヘルから遠い日本で、秋の涼しさを感じ、妻の入れてくれるお茶を飲みながら、そんなサヘルの冬の日々を懐かしく思い出しています。

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このページは、Yoshinori FUKUIが2002年10月11日 19:03に書いたブログ記事です。

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