日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

アスクレピオスの杖

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市内で救急車を見かけました。
消防署、Ambulance(救急車)という文字とともに、EMSという言葉と、青い星型の中に白い杖に巻き付いた蛇
のシンボルマークが書かれていました。
「杖に巻き付いた蛇」のシンボルは、サヘル地域でも広く医療組織のシンボルになっています。
とても懐かしく思いました。

あの杖に巻き付いた蛇の由来をご存じですか。
毒蛇にかまれると危ないから、じゃないですよ。
ギリシア神話に由来するお話ですが、サヘル地域でもポピュラーなシンボルなので取り上げてみます。

杖に一匹のヘビが絡んだシンボルは「アスクレピオスの杖」と呼ばれています。
アスクレピオスは、ギリシャ神話に登場するアポロンの息子です。
アスクレピオスの母は、アポロンの恋人でしたが、彼女の妊娠を知った父親が、その相手がアポロンと知らず慌てて親戚の青年と結婚させてしまったため、アポロンの怒りに触れ、殺されてしまいました。
しかし、自分の子供は殺すに忍びなく、犬と蛇をつき添わせて、半人半馬のケンタウロス族第一の賢人ケイロンから医術を学びました。
犬と杖に巻きついた蛇をいつも連れているアスクレピオスと名付けられたその子は、死者までも生き返らせるほどの腕になりました。
しかし彼があまりに多くの死者を甦らせたため、冥界へ行く死者がいなくなってしまい、冥界の王ハーデスは、弟であるゼウスに頼み、雷によってアスクレピオスを殺してしまいました。
しかし、アポロンはゼウスの子供ですから、アスクレピオスはゼウスの孫にあたります。
息子アポロの願いから、彼をいつも側にいた蛇と共に天に上げて星座としてやりました。
これが「蛇使い座」 です。
アスクレピオスはいつも杖を持ち、その杖には蛇が巻きついていたため、一匹の蛇が巻きついた杖のことを〝アスクレピオスの杖〟と呼ぶようになり、彼が非常に医学への造詣が深かったことからのこれが医療のシンボルになりました。
ローマで疫病が流行した時には、彼がヘビの姿で現れて市民を救ったと言う伝説もあります。

蛇足(その1)

翼を持った杖に2匹のヘビが交互に巻き付いたものは、よく似ていますが医療のシンボルではありません。
この杖はアポロンから送られたヘルメス(マーキュリー)に送られたもので、ヘルメスは賢く、敏捷で、手先も器用であったため、金融業、商業、賭博、旅行、詐欺師、盗賊の神として崇められていたので、彼の持つ杖が金融界や郵政界や大使のシンボルになったそうです。
この杖は「カドゥケウスの杖」と呼ばれ、は金融界や郵政界に残るシンボル、あるいは公式の使者の象徴また神聖の印として伝令使や大使がもちいる杖となりました。
水星(ヘルメス=マーキュリー)の惑星記号もこの杖の意匠から取られていますね。
ちなみに、からみあうヘビの意匠は世界中で見られ、ヘビの脱皮が死と再生を連想させることから豊饒のシンボルである場合が多いようです。

蛇足(その2)

EMSはEmergency Medical Service(緊急医療サービス)の略なんですね。
青い星は、調べてみるとスターオブライフというEMSのシンボルで「生命の輝き」を表すことがわかりました。
初めはオレンジクロスと呼ばれる白地にオレンジ色の十字をあしらったものをEMSのシンボルとして使用していましたたが、アメリカ赤十字から模倣であるとの批判を受けたために、1973年に今のシンボルマークが作り出されたそうです。
アメリカで意匠登録されましたが1997年に期限が切れ、現在では世界中の救急救命士や救急車等にも使用されているとのことです。
スターオブライフの放射状に伸びた6本の柱は上から時計回りに以下のようなEMSの機能を表しているそうです。
1 DETECTION(覚知)
2 REPORTING(通報)
3 RESPONSE(応答:迅速な行動)
4 On Scene Care(現場手当)
5 Care In Transit(搬送中手当)
6 Transfer to Definitive Care(医療機関への引き渡し)

蛇足(その3)
サヘルでサソリには3度刺されました。
サソリは黒っぽいのが毒が強いそうです。
私が刺されたのは、どれも黄色っぽいやつでした。
蛇にはありがたいことにまだ咬まれたことはありません。

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このページは、Yoshinori FUKUIが2003年3月25日 20:23に書いたブログ記事です。

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