日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

赤血球の話

| コメント(0) | トラックバック(0)

昨日、「サハラの風」の脾臓の話の中で赤血球について触れて思い出した、鎌状赤血球のお話を。
西アフリカには、鎌状赤血球という、一般的な中央のくぼんだ円形ではなく遺伝的に半月状の赤血球を持つ人たちが大勢います。

人種的・地理的分布にははっきりした傾向がある。北緯15度と南緯20度の間にある<鎌状赤血球症遺伝子保有者の多発地帯>のアフリカ黒人に最も多く見られる。遺伝子保有者は西アフリカでは5-20%、中央アフリカの一部の人種(コンゴ、ザイール、ナイジェリア)では40% にのぼる。米州の黒人(米国の9%、仏領アンチル諸島では12%)にも本症が見られる。時には中央アジア、サウジアラビア、インドなどで皮膚の黒くない人々にも認められ、稀にトルコ、ギリシャ、マグレブにも発生する。

sickle cell anemia, drepanocytose

鎌状赤血球の場合、感染症の頻度が高くなるそうです。
それは「脾機能の低下や臓器の梗塞にために細菌の増殖を許すからである。 純粋な意味での免疫防御機構は殆ど傷害されない。 (出典同上)」とのこと。
しかし鎌状赤血球はまた、マラリアへ対応するために獲得・維持されたものであるとも言われています。

熱帯熱マラリア原虫による悪性マラリアは、ホモやヘテロの鎌状赤血球症患者では正常人より少ない。ヘモグロビンSをもった赤血球で酵素分圧が低い場合、熱帯熱マラリア原虫は増殖が弱まるのである。これはある意味では、ホモの症状が重篤にも拘わらず<鎌状赤血球地帯>での遺伝頻度が維持されていることに関係している。

sickle cell anemia, drepanocytose

しかし、マラリアの汚染地域であるサヘル地域に暮らしていながら、私の妻の属するトゥアレグには、鎌状赤血球を持つ人がいません。
トゥアレグに関する文献には、人種的にトゥアレグには鎌状赤血球が多いと書いてあるものもありますが(どの本に書いてあったか忘れました(^^; 調べておきます)、マリ北部で活動のお手伝いをしていた MÈdecins du Monde (MSF) によれば、トゥアレグに鎌状赤血球はないとのことでした。
これはどういうことでしょうか。

鎌状赤血球にならない何らかの遺伝的要素を持っているのでなければ(という条件がついてしまいますが)、
1.マラリア汚染地域にトゥアレグが進入し暮らすようになって、それほど(ってどれくらいかわかりませんが(^^;)年月が経っていない
2.人種を越えた婚姻がそれほど進んでいない
ということがいえるのではないでしょうか。

トラックバック(0)

トラックバックURL: http://sahelnet.org/mt/mt-tb.cgi/206

コメントする

このブログ記事について

このページは、Yoshinori FUKUIが2003年9月14日 06:20に書いたブログ記事です。

ひとつ前のブログ記事は「脾臓の話」です。

次のブログ記事は「携帯電話のデータ」です。

最近のコンテンツはインデックスページで見られます。過去に書かれたものはアーカイブのページで見られます。