日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

昔ながらの暮らし

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質問なんですけど、昔ながらの生活って今もあるんですか?

日本の暮らしから: 中国の農村と都市

伝統とか文化というものは、実は不変的なものじゃなく、時代によって移り変わってきたものですよね。
だから「昔ながらの生活」というものも、固定的に捉えることはできません。
でも、その地域に適した持続可能な営みだからこそ、現代のグローバリゼーションの波に飲み込まれるまで、長い年月続いてきた暮らし方というものがあると思います。
それを「昔ながらの暮らし」と呼んでもいいのではないでしょうか。
そしてそれは今も確かにありますね。

ほんの一瞬しか見ることのできなかった中国については、ここの暮らしがそうだ、と私には言うことができません。

でも私がマリやモーリタニアには、ヒツジやヤギやラクダを飼い、テントに住み、100年、200年前とほとんど変わらない暮らしをしている遊牧民は大勢います。

数年前、今はマリの北部の井戸で出会った遊牧民は、
「トンブクトゥに3度いったことがあるんだ。夜中も明かりが灯っていた(トンブクトゥには電灯がある)」
と話てくれました。
「住みたいところだったかい?」
「いや、私の場所はここだ」

彼の暮らしが100年前と違うのは、その伝統的な衣装が機械で織られた生地だということ、中国製のお茶を時々飲むこと、くらいでしょうか。
都会の話は彼の耳にもいろいろ入ってきているでしょう。
3日も歩けば(100kmほど)そんな近代的な暮らしがあります。
しかし彼はそれには染まらず「昔ながらの暮らし」をしていました。

やはりマリの、アルジェリアの国境に近い井戸では、私を見るなり水を汲みに来ていた少女たちが大声をあげて走って逃げていきました。
「アカーファル(普通は白人、外国人という意味)を見たのは初めてだから怖かったんだよ」
と男が弁解しましたが、それはぜんぜん慰めの言葉にはなってませんよねえ。
あ、そういう「外の世界」と隔絶した暮らしをしているところもあるというお話でした。

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jujubeさん

お久しぶりです。

先日数十年ぶりに「アラビアのローレンス」の
ビデオを、息子と一緒に見ました。砂漠の中で遊牧民として生きる人達の価値観、生き方と、イギリスの価値観、生き方の狭間で葛藤するローレンスの姿は、美し過ぎる砂漠の光景の中でとても痛ましく思われました。

jujubeさんの言われるとおり数百年間も同じ暮らしをしている人達が、この地球上にはまだまだ実存しておりますし、正にこの地球上が文明上のタイムマシンと同じでね。ニューギニアのジャングルの中で生活している人たちが、飛行機を見て神様の到来と勘違いして後を追うドキュメンタリー番組(やらせであったかも知れません)が以前ありましたが、石油の恩恵で成り立っている現代文明社会は、一体人類にとって本当に幸せな生活なのか、考えさせられます。素朴な生活をしている彼らの中にこそキラキラと光る瞳を見つけると、ロレンスでなくとも自分の生活に疑問を持つのは当然でしょうね。

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このページは、Yoshinori FUKUIが2003年10月 2日 05:26に書いたブログ記事です。

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