日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

ラクダのこぶ

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「週刊アスキー」というパソコン週刊誌に、浅暮三文著『魔法使いは缶詰にいる』という連載小説があります。この小説の1月20日号(通巻473号)にこんな部分があります

見えているのはピラミッド。
(中略)
あなたの背中は奇妙にでこぼこしている。まるで背中に巨大なペンだこでもできたように。つまりそれはふたつの瘤。あなたはいつの間にか、砂漠の駱駝に変身していた。

思わず「違うだろっ!」と心の中で叫んでしまいました。

ラクダという単語は、フランス語で2種類あります。chameau と dromadaire 。
dromadaire はひとこぶラクダ、 chameau はふたこぶラクダのことです。

ふたこぶラクダはモンゴルとゴビ砂漠及びその周辺だけに生息しています。
つまりピラミッドのあるエジプトには、ふたこぶラクダはいないわけです。
西はセネガル・モーリタニアからエジプト・アラビアを経て東はインドまでの広い地域にいるラクダはヒトコブラクダだけです(中国からパキスタンにふたこぶラクダがつれてこられているのかどうかは知識不足で知りません)。
皆さん、ご存じでしたか?

それからひとこぶラクダは、アフリカからアジアのこれだけ広い地域に分布していますが、野生のラクダはいません。
ただし、オーストラリアに家畜として連れて行かれたラクダが、ディンゴ(野生化した犬)同様に野生化しているという話は聞きました。

日本語や英語には、ひとこぶもふたこぶも「ラクダ camel」というひとつの単語しかないので、ひとこぶラクダとふたこぶラクダをごっちゃに考えてしまいがちですね。

ちなみにフランス語では dromadaire より chameau の方が一般的な言葉のようで、サヘルでも実際には dromadaire と呼ばなければいけないひとこぶラクダを慣用的に chameau と呼んでいるのも時々耳にします。
それから家畜関係の資料には「ラクダ類」という意味で、chamelon という単語もよく見ます。
これに合わせる場合は、ウシ類 bovin、ヒツジ類(ヤギを含む) ovin、ウマ類 chevalin となります。


余談になりますが、ラクダのこぶはには水は入っていません。
あれはラクダのエネルギー源の脂肪のかたまりです。
疲れてくるとあの瘤がしぼんできます。

それから、ひとこぶラクダは、摂氏40度以上にならないと汗をかかず、尿も1日1リットルと少なく、体内の水分を非常に効率よく利用できるます。
さらに、必要な水分を人間のように血液からではなく体組織から利用しているので、体重の40%の水分を失っても死なないそうです。
そして必要とあれば、10分間で90リットル以上の水を飲むことができます。(世界大百科事典より)

また、分厚いタイヤに穴をあけるような大きなトゲのついた木の枝も、平気で咀嚼します。
平たく大きな足は、砂漠の砂に潜りにくくなっています。
耳の中には長い毛が生えており、まつげも長く、鼻孔は自由に開け閉めでき、砂嵐にも完全防備。
座ったときに地面に接する胸や四肢には硬く角質化したタコがあり、砂の熱さやごつごつした岩地でも平気で休息できます。
ひとこぶラクダは、数多くの砂漠仕様の特徴を備えた動物ですね。

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このページは、Yoshinori FUKUIが2004年1月10日 17:28に書いたブログ記事です。

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