(2005.11.06改訂)
パリ近郊に端を発する暴動は、沈静化せず、むしろフランス中に広がり始めている。
発端は、10月27日に警察に追われて(と初期の報道にあるが詳細不明)変電所に逃げ込んだ15歳と17歳のアフリカ系の若者(家族はそれぞれチュニジアとマリ出身だそうです)が感電死した事故。
これに抗議する形でパリ郊外北部の北アフリカ系の移民が多い地域から暴動が起こり、あちこちで車が燃やされている。
シャルルドゴール空港とパリ市内を結ぶ鉄道の駅で乗客や乗務員が若者らに襲われたり、路線バスが放火され、身障者の女性が逃げ遅れ大やけどをおったりもしている。
暴動が起きている地域は、移民やその2代目・3代目が多く、失業率が高い地域。
仕事がないことによる貧困、犯罪の増加、環境と評判が悪くなりさらに仕事がなくなる、という悪循環。
それに加えて、テロ対策からの取り締まりの強化。
そんな状況に置かれたフランス語圏西アフリカや北アフリカ・イスラム系移民の若者たちが今回の暴動の中心にいる。
歯に衣を着せない発言で人気のサルコジ内相だが、今回はその言動がことごとく裏目に出ている。
移民やその2代目・3代目の問題視される若者たちを「社会のくず」と呼び「厳しく対処する」とし、事故死した若者たちの遺族や移民、それに同情する移民系の人々から強い反感を買ってしまった。
おかげで、遺族を首相府に招いたり、移民の心情を組みつつ事態に対処するとそたドビルパン首相の株が上昇し、次期大統領選挙にも大きな影響を及ぼしている。
今回の暴動は、自由、平等、博愛が幻想になってしまった、今のフランスの内政に対する移民系の若者たちの積もり積もった不満が一気に噴出したものだ。
仮にこの事態が沈静化しても、現状と変わらない政策が続き、移民系の人々のおかれた状況が変わらなければ、火種は残ったままで、いつまた同じような暴動が起こってもおかしくないだろう。
先に触れた次期大統領選挙に向けて、サルコジ内相側は、今後批判を自分以外に向けるための情報操作や対策を行うだろう。
それは、移民融和政策と反対の方向にさらに進んでいくものだろう。
フランス在住の日本人の方々のブログを読むと
・今回の事件に全く触れていない(自分には直接関係ないという意識から、強い批判を書きたくない、どう扱っていいかわからない、などいろいろな理由があるだろう)
あるいは、
・彼らは政策的に保護され過ぎ
・責任は彼らにある
という立場のものが多い。
それを読みながら(あるいは何も書かれていないことから)、そのスタンスは、西アフリカの国々やそこに暮らす人々の現状に対する、日本や欧米のスタンスと共通しているところがあると感じるのは的外れだろうか。
また、事件後数日して、この状況がようやく日本でも報道され始めたが、その中のCNNの記事が気になった。
他紙の記事が、発端の感電死した若者を「アフリカ系」と報じているのに、CNNのみ毎回「イスラム系」と報じている。
・CNN.co.jp : パリ郊外などの暴動、依然続く、地方各都市にも波及
・CNN.co.jp : パリ郊外などの暴動、収束の気配なく 地方都市に波及
これは意図的なのだろうか?
お隣の国に住みながらフランスでそんなことがあったなんてまったく知りませんでした。
フランスは人種差別をあからさまに出す国だとは知っていましたが、ここまですごいとは知りませんでした。
イギリス人も人種差別はありますが、表面には出しません。
どちらもどちらですが、亡くなった若者が気の毒です。
なぜそんなところへ行ったのですか?(発電所)
CNNの「イスラム系」発言も嫌ですね。
北アフリカ=モスリム=イスラム系=テロリスト・・・なのでしょうか?
maryam@LONDONさん、コメントありがとうございます。
> フランスでそんなことがあったなんて
BBCやロイターでも大きく報道されています。
http://news.bbc.co.uk/1/hi/world/europe/4407688.stm
http://today.reuters.co.uk/news/newsArticle.aspx?type=worldNews&storyID=2005-11-05T085607Z_01_KNE228332_RTRUKOC_0_UK-FRANCE-RIOTS.xml
きっとテレビでも報道していると思います。
うちは、インターネットで、フランスの報道を見ています。
暴動で壊されたり放火された車はパリとその近郊だけで1300台近いそうです。
> なぜそんなところへ
警察に追われていると思い、たまたま逃げ込んだところだ、変電所だったということのようです。
スイスはほぼ連日このニュースを報道しています。
教会や学校まで放火された、と昨日の夜のニュースで知りました。
移民の背景には、あまり突っ込んだコメントはないようです。
今のところ、お隣の国の動向を注意深く見守っているという印象です。