日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

少数民族

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プロジェクトX「地図のない国 執念の測量1500日」についてもうひとつ。

物語の中で、地図作りの場所、密林の中の恐ろしい少数民族が描かれていました。
彼らに近づくために作った辞書が映し出され、ナレーションでも、こんにちはは「アニスーマー」と言うのだとありました。

これは明らかにマンディング系の言語です。
そしてマンディング系マリンケは、ギニアで1・2番の人口の民族です。
これはどういうことでしょうか。

ギニアの民族構成は、外務省の資料によれば、マリンケ 34%,フルベ 29%,スース 17%、そのほか18あまりの民族で20%。
CIA の The World Factbook によれば
フルベ 40%, マリンケ 30%, スース 20%, そのほか 10%。
いずれにしてもマンディング系は少数民族でありません。

というこは可能性はふたつあります。
1.言語グループと民族は違うので、あそこで描かれていた少数民族は、マンディング系の言葉を使うけれども民族は違う。
2.首都に住む政治的に力を持った民族はフルベである。したがって人口は多いが地方にいる民族が少数民族として描かれた。

実は、この番組の前半を見ていないので(すみません!)間違った見方をしているかも知れません。
しかし、番組を見ていて気になったことなので書いておきます。
どなたか、この番組を最初から見ていた方、あるいはギニアに詳しい方がいらっしゃいましたらコメントしてください。

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コメント(2)

はじめまして。名はdiableということで。

あの番組はひととおり観ました。
おっしゃるとおり、少数部族といいながら、画面では最大部族の言葉を紹介していたり、ほかにも無知と誤解に基づくナレーションが多々ある欠陥番組でした。

言葉については、単純に、自分の移動地とそこで使われていた言葉がごちゃごちゃになっているだけのようです。この番組の土台になった本そのものが、ギニアをあまりご存じない方が書かれたものでしたから。少なくともフランス語が理解できなければ正確な状況は把握・理解できなかったでしょう。それにくわえてNHKスタッフのいいかげんな番組作りの姿勢があったからだと推測します。あるいは能力不足も。

もっとも、それよりも大きな問題がありました。「ギニアの国内地図がなかった」という前提です。そしてそれは旧宗主国フランスが持ち去ってしまったから、と番組では伝えていました。これはまったくの誤解か、そうでなければ、視聴者により強く訴えるためのウソでしょう。あの辺りは、マリも含めて、1950年代にフランスが航空写真を撮り地図化しています。そして現在に至るまでギニアはその地図を使い続けていますし、あの日本の地図作りグループもそれを土台にして作業を進めたもののようです。

それから、番組ではいかにも日本人グループの地図が完成したかのように思わせる作りをしているのですが(巧妙に言い逃れている)、その実は、ギニアにはその地図は存在せず、番組の終わりのほうで映されたそれらしき印刷物(地図?) の映像は、どうも東京の請負会社の資料室で黒人使って撮影したものと思われます。要は、日本人グループがギニアで地図作成の下準備の作業を完成させた、というのが真実で、実際の地図は何枚かだけ印刷されたものの、それはごく一部の地域だけでした。尻切れトンボの経済援助でした。

今回のNHKの取材班は、ギニアでその地図を見たはずはありません。皮肉にも、初めから存在していないものですから。航空写真すら、とうの昔に散逸しているはずです。この番組の実態は、典型的な役立たずの経済協力プロジェクトの紹介番組となっていました。それをごまかしたつもりのところが、スタッフの腕の見せ所だったのでしょう。ところが、なかなかウソはつけないもののようです。最近は、日本にもマンディング(マリンケ)語をかじっている人がけっこういて、複数の知人も不思議がっていました。NHKがウソをつくはずはないし、と。

diableさん、情報ありがとうございました。
文化も風土も違う異国の地で、何かを成し遂げるのはとても困難なことだと思います。
成功するより失敗することの方がずっと多いです。
例えば遊牧民を対象にしたプロジェクトは、そのほとんどが失敗、あるいは短期的に成功しても持続性のないものばかりです。
それを飾らず、失敗は失敗として知らせることこそ、とても価値あることだと思います。
なぜ失敗したのか、うまく行ったのはどの部分か、それはなぜか。
そういう分析と報告が、今の失敗を未来の成功へとつなげる重要な要素だと思います。

プロジェクトXは、「努力は報われた」という成功の物語でしょう。
それはそれなりに人に生きる活力を与えるものでしょう。
でもそこにすむ人々(この場合はギニアの人々ですね)の未来を考えるのならば、成功裏に終わったプロジェクトでも、働いた人々の汗を見せる以上に、何につまづき、それを如何に次のステップにつなげてたか、あるいはつなげられなかったのは何か、なぜか、ということを知らせる物語があるべきなのでしょうね。
そんな物語はテレビ番組にはならないのでしょうが。

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このページは、Yoshinori FUKUIが2003年4月 8日 23:55に書いたブログ記事です。

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