先ほどは、暑さにまつわる私のノスタルジーをお話しました。
今度は妻のノスタルジーについて。
8年ほど前、妻と車で、モーリタニアの首都のヌアクショットから東の260kmほど入ったアレグ(Aleg)を訪れました。
そこには、雨期に降った水が集まり、何ヶ月か残っている大きな季節湖がありました。
妻は何も言わずそれを長い間見つめていました。
気がつくと妻の頬に涙がつたっていました。
妻のふるさとは、大きな砂丘がいくつもある砂漠の中の村です。
しかしそこはファギビーヌ湖というサヘルでも有数の季節湖のほとりにありました。
幼い時には、砂丘で遊びもしましたが、小舟に乗ったり、稲の植わった田んぼの中を走り回ったりもしたそうです。
アレグの砂漠に抱かれた湖の風景は、記憶の中のふるさとにうりふたつだったそうです。
当時マリはまだ内戦状態でした。
いつ安心してふるさとに戻れるかわからない中で、ふるさとを思いだしたら、涙が溢れていたそうです。
うーん、炎天下の車の中の暑さでサヘルを思い出すより、こっちの方がかっこいいですね。
表題の「テネレ」は、トゥアレグの言葉で「何もない砂漠」という意味です。
しかし同時にノスタルジーという意味もあります。
砂漠という言葉が同時に望郷を表すというのは、いかにも遊牧民の世界ですね。
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