日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

Tinariwenのメッセージ性

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渋谷でのコンサートに行ってきました。
前日、万博会場で、マリのナショナルデーで集まったマリ関係者とお話しさせていただいて、
「あんまり人が集まっていないみたい」
「当日券もまだたくさんある」
という情報を伺いました。

私たち家族も、今ひとつ話題性と盛り上がりにかけているみたい、という風の便りを前から聞いていました。
日本で初めての、マリのトゥアレグのコンサートです。
今回こけてしまったら、次が難しくなりますよね。
だったら私たちで少しでも盛り上げよう!と急遽参加することにしました。

電話してみると、当日券ありました。
喜ぶべきか、悲しむべきか・・・
仕事を午前中で片付け、午後3時過ぎに出発し、なんとか開演に間に合いました。

妻はもちろん、トゥアレグの民族衣装で正装。
私もマリの民族衣装を引っ張り出してきました。
けれど、タギルムース(ターバン)を人にあげてしまってなかったので困りました。
そこで、前夜、妻のベールを一着、糸をほどいてタギルムースに戻させてもらいました。
同じ布で、男性のターバンになったり、女性のベールになったり、ひとつのものをうまく使い回している遊牧民の文化が、こういう時に役立ちました(大袈裟かな?)。
私はブーブー(貫頭衣)で、息子はピッパオ(アラブ風の長衣)を着ました。
娘は恥ずかしがって普通の洋服でした。

私たちがコンサート会場に入った時には、フロアにまばらにしか人がいませんでしたが、開演直前には、フロアはぎっしり埋まっていました。
心配することはなかったですね。

会場では、東京に住む奥さんがやはりトゥアレグのご家族にお会いしました。
久しぶりにお会いして旧交を深めることができました。
妻とあちらの奥さんは話が弾んでいました。
子どもたちも、フランス語が話せる遊び相手が見つかって、大はしゃぎでした。

また、mixiでtinariwenのコミュニティを作られていらっしゃる方とも、お会いしました。
来年にはマリに行かれたいとのこと。
実現するといいですね!

さて、肝心のコンサート。
盛り上げなきゃ、なんて考える必要ありませんでした。
家族みんな、思いっきり楽しんできました。

ただ、Tinariwenの音楽を楽しみながら、その歌詞を聴いていると、どうしてもそのメッセージ性について考えてしまいました。
彼らの音楽は、政治や行政のサービスから外れた、基本的な人間の尊厳が維持できない人々の抵抗の歌です。
彼らの歌が、マリ国内で大きなムーブメントとなった時代は過ぎました。
しかし、彼らのメッセージは普遍的なものです。
だからこそ今も、マリ国内で彼らの音楽が愛されています。

今、世界規模で彼らの音楽が高く評価されています。
しかし、今日のコンサートのような形では、そのメッセージは置き去りになってしまっているのではないかと思いました。
その懸念を、コンサートの後プロモーターの方にお話しすると、言葉でなく音楽そのものを通して彼らのメッセージは伝わっているんじゃないかとおっしゃっていらっしゃいました。
でも、ワールドミュージックのシーンで今一番熱いグループだ、というような話題性や、ふと耳にしたリズムからこのコンサートに来られた方も少なくないでしょう。
会場で、彼らからのメッセージか、彼らの音楽について解説した1枚紙でも配られたらよかったのにと思いました。
それが彼らのポスターでもあったり、サインでも入っていたら、それを眺めながら彼らのメッセージに触れ、そこから何かを考える日本人が一人でも増えたかもしれないのに、と考えました。

コンサートの後、ステージから我々を見付けてくれていたTinariwenのメンバーが、私たちを楽屋に招待してくれました。
東京のトゥアレグの奥さんのご家族は、Tinariwenのメンバーの何人かと10数年の親好があり、コートジボワールにお住まいの頃、メンバーの何人かはそのお宅によく泊まっていらしたそうです。

Tinariwenのメンバーと楽屋で
写真中央の黄色いTシャツの男性は、私じゃないですよ。
今回のTinariwenの来日を実現されたOffice Sambinhaのプロデューサー田中さんです。

メンバーのひとりAbdallahは、私たちとも連絡を取ろうとしてくださったそうです。
昨日はマリのナショナルデーの関係で、電話を切っている時間が長かったのでつながらなかったようです。
てっきり東京に住んでいると思ったそうで、「キダールとガオくらい離れたところから来たんだよ」、というと驚きながら笑っていました。

よくよく話を聞いてみると、私は彼らの音楽を、マリで何度も聞いていたのでした。
コンサートといった大袈裟な場ではなく、友人の結婚式とか、お祭りで招待されたお宅で、彼らの何人かが演奏をしていたのでした。
演奏している方は、トゥアレグ社会に紛れ込んだ変な日本人だと印象に残っていたのでしょう。
しかし私の方は友人宅で演奏していたミュージシャンが、まさかこんなに有名になっているとは夢にも思いませんでした。
友人宅での結婚式やお祭りの様子は、ビデオにとってありますので、Tinariwenの貴重な映像がうちにあるわけですね。
なんかちょっと得した気分です。

「来年も待ってます。今度は1回限りのコンサートでなく、日本各地でコンサートしてもらいたい」
と別れの挨拶をして会場を離れました。

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コメント(6)

こんにちは、ナタールです。
アフリカ大陸も、様々な国があって、マリも何だか関心が出て
きました。
音楽的にはアフリカはエネルギッシュでパワフルですね。

コンサートを楽しまれたとのこと。
こういった渋谷でのコンサートなどはどういう感じなのですか?
観客は何人くらい集まるのですか?
とても関心があります。
日本でももっと「アフリカ」に馴染みを持ってくれると嬉しい
のですが。

はじめまして。
私も2日のAXでのライブ、観に行きました。
見た事もない民族衣装と、初めて見る「マリ」出身の人々。
大好きなジェンべのリズムに、ベースなどがどう絡まるんだろう。。。と大いに期待はしていましたが、総ての要素が交わって、本当に不思議な空間で、まるで屋外にいるように思えました。

ただ、歌詞が分からず、一曲一曲何を主題にして歌っているのかきちんと知りたかったなあと、少し残念でした。
せっかく遠い国から来日して、素晴らしいステージを見せて頂いたのに、絶好の機会を逃してしまったような...

マリ共和国という国に対する情報が乏しく、内容を想像できないので、余計悔しかったです。
でも、また来日して下さると良いですね。

トラックバックありがとうございます。
コンサートは、とてもよかったです。曲について、もっと知っていれば、より深く入り込めたでしょう。
またの来日がまたれます。
また、きます。

初めまして!
コメントありがとうございました。(早速トラックバックをさせて頂きました。)
日記にも書きましたが、ティナリウェンについて私は年初にネット上の知り合いの方から教えて頂きました。(http://www.enpitu.ne.jp/usr4/48158/)
その知り合いの方も先日のライブを観たそうで、とても良かったとのコメントがありますね。
私は不勉強なもので、ティナリウェンの、その音楽から伝えようとしているメッセージにはほとんど目を向けていませんでした。
まさしく
>ワールドミュージックのシーンで今一番熱いグループだ
という理由が聴く原動力になっていました。

歌詞にも目を向けてみようと思います。

トラックバックありがとうございます。

2作目のCDについている英語の対訳を見てから来た人も少なくないと思うので、歌詞がまったく理解されてなかったわけでもないのではないでしょうか。

たとえ言葉がわからなくても素晴らしいと感じさせるのは、ティナリウェンの力だと思います。
もちろん、言葉がわかるにこしたことはないですが。

とにかく万博がらみでもないのに、ティナリウェンのようなグループが来日して、ライヴを見れただけでも貴重な体験でした。関係者の尽力に拍手したいです。

シャデックの息子です。本当にtinariwenライブ楽しかったです。皆様元気にお過ごしでしょうか??私達は元気に過ごしています。またtinariwenライブあればいいですね。皆様風邪をひかないように元気に過ごしてください。またtinariwenライブありますように。。。。。。。。お母さんも皆さんによろしくと言っていました。

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このブログ記事について

このページは、Yoshinori FUKUIが2005年9月 2日 23:44に書いたブログ記事です。

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