日本に戻り暮らし始めてから、サハラ再訪まで

フランスの暴動の根っこはどこにあるのか

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引用&トラックバックさせていただいた投稿「移民二世とワールドミュージック」の解釈について、「アイデンティティは創りあげるもの」で、解釈の間違いを指摘いただきました。
ご指摘の内容と引用させていただいた投稿を読み直し、解釈の間違いを認め、お詫びいたします。
眠い頭で文章を読み書きし、内容を寝かせないで投稿するとだめですね。
深く反省。

投稿を書き直しました。
しかし、間違えた部分を消して書き直したものを上書きしては、すでにいただいているいくつかのトラックバックや、わざわざ書いていただいた「アイデンティティは創りあげるもの」の内容が不明瞭になってしまいます。
そこで恥ずかしいですがこの投稿はそのまま残し、書き直したものは、「フランスの暴動、狭間のいらだち」というタイトルの新しい投稿にしました。

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パリ近郊から始まった暴動の続き。

もはや、パリの、という限定的状況ではなくなった暴動について、日本の3つのブログの分析が目を引いた。

端的に言えば、暴動の主体は紛う方なき歴としたフランス人なのである。言語的にもカルチャー的にもフランスに違和感をもって育った人ではない。暴徒の行動原理は一義的にはフランス人のそれであると理解していいだろうと私は思う。つまり、移民が問題の根幹にあるのではなく、ある問題が移民に投影された問題と理解したい。また、彼らの大半は未成年でもあり、大枠では、思想性もない、ありふれたお子ちゃまの大暴れという認識に留まるだろう。

引用元:極東ブログ: フランスの暴動について簡単な印象

彼らはフランス人である、そして特定の状況にあるフランス人の問題が移民の暴動という形で現れているという分析。

結果的に若いイスラム系の移民たちは、フランス人の提示するロールモデルに従って自己改造する意思を持たず、むしろ彼らが見たことも触れたこともない(その言語さえもう話すことができない)アフリカの民族的伝統や価値観に固執することでかろうじてプライドを維持しようとしてする。
このようなエスニック・アイデンティティの維持がもしかなりの程度有効であったならば、今回のような暴動は起きなかっただろうと私は思う。
ここまで問題が深刻化したということは、「フランス社会への同化」に対抗して立てられた「エスニック・アイデンティティ護持」という移民側の「自前のポリティックス」がもう実効性を持っていないことがあきらかになったということを意味している。
イスラムの信仰を守り、イスラムの習俗を堅持し、フランス的価値観を峻拒し、植民地主義的収奪の弱者として宗主国の倫理的責任を糾弾し続けてフランス社会内部にとげのようにささった「異族」としてあえて告発者の立ち位置を維持するという「告発のポリティクス」。

引用元:内田樹の研究室: la nuit violente en France

両親や祖父母の祖国の伝統や価値観に固執することで、プライドを維持しようとしている、という指摘。

大前提は、とにかく移民二世層が「フランスで育っている」ということです。だから彼等に「故国」に帰れというわけにはいかない。なぜなら多くの場合その「故国」とは、いっぺんも住んだことがなくて習慣も知らない、言葉もよくわからないという国だからです。とくに「自由」をもって最大の価値とするフランスの社会で教育を受け、育った移民二世(とくに女性)が、一般的にフランスよりはるかに拘束の強い故国の社会にとても順応できないと思うのは当然です。
移民層をフランス社会の中に取りこんで「統合」していくことを決意するなら,彼らがフランス社会内でプライドを持てるようにしなければなりません。フランス伝統の文化に飲みこまれるだけでは永久に劣等感から抜け出られない。出自の文化が誇れるようでなければならないのです。
確固とした誇りを持つことができれば、軽はずみな破壊行為、さらに自らの将来の可能性を閉ざしてしまうような行為に自制が働きやすくなるでしょう。

引用元:フランス語系人のBO-YA-KI:移民二世とワールドミュージック

彼らはもはや、帰る国を持たない。
しかし、一方で両親や祖父母の文化に頼る必要があるという指摘。

彼らは、帰る国を持たないフランス人だ。

これらの分析をなるほど、と思いつつ、完全に納得できず「しこり」が残った。
しばらく考えてみると、暴動を起こしている若者のアイデンティティ、その拠り所について、すっきり受け止められないせいだとわかった。

移民(一世)は、第二次大戦後、フランスの復興期にフランスに来て、自分の意思でフランスに留まった人々であり、社会的立場はともかく、祖国にいた時に比べればはるかに恵まれた経済状況に満足していただろう。
しかし二世、三世は、自分の意思で、フランスにいるわけではなく(それはフランス故国ないのフランス人や日本の日本人も同じ)、差別されても帰るところはない。
また一世と違い、上がっていけない社会的立場を受け入れることもできない。
両親や祖父母の祖国での暮らしも知らないから、自分たちの暮らしが「ましなもの」とも思えない。
このような状況で、移民二世・三世が、果たして両親や祖父母の伝統、文化、価値観に頼るのだろうか。
私には疑わしく思える。

暴動の中心にいるのは、間違いなく「イスラム系」「北アフリカ系」あるいは「西アフリカ系」の若者だろう。
報道する場合、自分たちと彼らを区別するためのレッテルとしてそれは分かりやすい便利なものでもあっただろう。
しかし、今回の暴動における彼らのよりどころは、実はそこにないんじゃないだろうか。

単純に、常日頃から自分たちを抑圧していると考えている社会、組織(警察)への反発、それが暴動の原点ではないのか。
だからこそ、ラマダンが終わっても問題は沈静化しなかったし、イスラムや北・西アフリカのコミュニティや伝統に解決の糸口を求めてもうまくいかないように思う。

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このページは、Yoshinori FUKUIが2005年11月 8日 01:09に書いたブログ記事です。

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